これから抗がん剤や放射線での治療を始める方にとって、薬や放射線療法の副作用はとても心配なものです。
副作用にはいろいろな症状があり、現れ方にも個人差があると言われていますが、大切なことは副作用に対する正しい知識と理解を深め、副作用が現れたときに適切に対処していくことです。
副作用の症状には、発熱、咳・息切れ、悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、便秘、手足のしびれ(末梢神経障害)、皮膚障害、疲労、脱毛など自分でわかるものと、自覚症状が乏しく、検査を行うまで自分ではわからないものがあります。
また、治療後1〜2周間で発現する副作用もあれば、治療開始後1ヶ月以上経ってから現れる副作用もあります。
副作用の症状については医療従事者の方と相談しながら治療を進めていくことになりますが、セルフケアでできることも多くあります。 普段よりも敏感になっている体をいたわりながら治療を続けていきましょう。
脱毛期のぼうし
脱毛期・育毛期の頭皮ケア
爪への影響について
皮膚トラブルの予防
口内炎や口の中の乾燥
脱毛期のぼうし
医療用ぼうし
治療に伴う脱毛は外見の変化を伴うため、生活に大きな影響を与える副作用といえます。
医療用ぼうしは、汗が気になったり刺激に敏感な治療中の頭皮を刺激しないよう、肌触りや素材にもこだわって作られていますので、安心してお使い頂けます。
治療を経験された方の声を参考に開発された製品や、治療中でもふだん通りに過ごして頂けるように、お部屋にいる時や就寝時、外出時など生活シーンに合わせて使い分けられる豊富なデザインが揃っています。
ヘアキャップ
就寝時や調理の際などに髪の毛が落ちるのを防ぐヘアキャップは、お掃除の手間を省いてくれます。
また、脱毛期は皮脂や汗を感じやすいと言われています。ガーゼキャップは帽子の下にかぶることで皮脂や汗を吸収し、頭皮のベタつきを抑えてくれます。
治療中の頭皮は敏感になっていますので、肌触りの良いものや汗を吸収しやすい素材を選び刺激から守ってあげましょう。
脱毛期・育毛期の頭皮ケア
脱毛期の頭皮ケア
治療中の脱毛期は毛髪が少なくなるため、液体シャンプーを頭皮に直接つけると泡立ちにくかったり、泡立てる際の摩擦が頭皮にダメージを与えることにもつながります。
泡シャンプーはそのまま頭全体につけて洗えますので、頭皮へ摩擦を抑えやさしく洗うことができます。すすぎ残しによる毛穴のつまりも軽減され、かゆみの予防にもなります。
育毛期の頭皮ケア
抗がん剤治療後、髪の毛が5〜6cmになったらシャンプーを頭皮ケア用のものに切り替えていくことをおすすめします。
治療後は、頭皮が固くなることで毛穴の形が変化し発毛時の髪の毛が細くなったり、くせ毛が生えてきたりすることがあります。髪の毛を健やかに育むためにも、土台となる頭皮をしっかりとケアしていきましょう。
爪への影響について
爪の清潔・保湿と保護が基本
爪への影響は症状も出てくる時期も様々と言われています。
ケアの基本は、爪を清潔に保ち、保湿剤やハンドクリームで保湿を行い、爪を保護することになります。乾燥すると爪がもろく割れやすくなりますので、保湿剤やハンドクリームは指先までたっぷり塗って保湿しましょう。爪が割れやすいときは、マニキュアを塗って補強したり、手袋をはめるのも保護になります。
爪が脆くなっている時には、爪やすりで爪に負担をかけずに形を整えることもできます。
爪に現れる症状としては、黒っぽく変色したり、薄く脆く割れやすくなったりするほか、爪の周りが炎症を起こしたりするなどがあります。治療によって症状は異なりますので、医療従事者の方に相談しながら対処していきましょう。
爪の症状は、治療が終わってからも回復までには時間がかかります。爪の保護や指先の保湿は回復するまで続けましょう。
ハンドケア
爪を作る甘皮部分を乾燥させないよう手全体の保湿も大切になります。
副作用のひとつである爪の周りの炎症は、最初はささくれで始まることもありますので、症状が出る前から保湿剤やハンドクリームで爪の周りをしっかりと保湿し、こまめに手洗いをして清潔にしておくことが大切です。
また、爪に亀裂が入ったり変形したりしている時は、気づかないうちに引っ掛けてしまうこともあります。柔らかい綿の手袋をしたり、通気性のよい絆創膏や傷テープでテーピングをすることでも爪を保護することができます。
皮膚トラブルの予防
抗がん剤の投与により皮膚や爪の新陳代謝を行う細胞がダメージを受けた場合、皮膚の色素沈着や乾燥といった症状が起こります。乾燥した肌は、バリア機能が低下し外部からの刺激に対し弱い状態となり、肌荒れやかゆみにもつながっていきます。
皮膚障害を起こしやすい抗がん剤を使う場合には、早い段階からしっかりとしたスキンケアに取り組むことが大切です。皮膚のバリア機能を守るためには、清潔を保ち、皮膚への刺激を避け、保湿することが重要となります。
清潔を保つ
皮膚や爪が汚れていると、それ自体が皮膚への刺激になり症状が悪化しやすくなります。
爪や肌が汚れたら、刺激の少ない弱酸性・無香料の洗浄料でやさしく洗いましょう。泡の洗浄料はこすらずに汚れを落とすことができますので、お肌への負担が軽減されます。
刺激をさける
紫外線も皮膚には刺激となります。外出するときは日焼け止めクリームを塗り、帽子や日傘、長袖の上着を羽織ったりUV加工の手袋をしましょう。縫い目が直接肌に当たりにくい衣類など、着心地のよいものを選びましょう。
保湿する
皮膚が乾燥すると症状が悪化しますので、保湿クリームや保湿ローションなどはこまめに、たっぷり塗りましょう。
熱いお風呂に入ることは、かえって皮膚を乾燥させてしまいます。入浴はぬるま湯で長風呂にならないように気をつけましょう。手洗いや入浴後は、水分をおさえるように拭き(こすらない)、皮膚がしっとりしているうちにすぐに塗るようにします。
口内炎や口の中の乾燥
抗がん剤治療では、口内炎や食べ物の味を感じにくくなったり、違う味に感じてしまう味覚障害などの症状がでる場合があります。放射線治療では、口の周囲に放射線が当たると強い口内炎ができたり、治療の影響で唾液腺が萎縮して唾液が出にくくなり口の中が乾燥することがあります。
こういったお口のトラブルが起こっているときは、口の中に痛みがあったり、治療の影響で体力が落ちていたりして、歯磨きをしたり、うがいをしたりするのがつらく感じられたりするかもしれません。しかし、口の掃除を行わないと、口腔内が不衛生になり細菌が増えてしまいます。唾液と一緒に細菌が気管に入り込んだ場合は、肺炎につながる可能性もあります。
歯ブラシは、ヘッドが小さいものを選び、歯みがき剤がしみたり、痛く感じたりするようであれば、口腔ケア用スプレーや発泡剤を使わない低刺激性の歯みがき剤を使ったり、歯みがき剤は使わずに水だけで磨くこともできます。
市販の洗口液、液体歯磨き剤でアルコールを含んでいるものは粘膜を刺激するため、使用を控えたほうが良いと言われています。
口の掃除ができない場合は、無理をしないでぬるま湯、または生理食塩水を使って、ぶくぶくうがいを行いましょう。症状の出方は人それぞれですので、無理して我慢せず、医療従事者の方と相談しながら対処していくことをおすすめします。